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朱徳はいつも暇を見つけては、捕虜になった敵兵と話をした。

寧都の捕虜はたいそう貧乏で、文盲で、素朴な心情をもった農民ばかりであった。

彼らは、朱将軍の言葉によると、

「鉄砲の撃ち方のほかは、何ひとつ教えられていなかった」

この敵連隊の兵士たちみなを説得する集会のおわりに、朱将軍は、紅軍に参加したいものは、どうか入ってくれ、しかし、いやなものは、旅費を支給するから、郷里へ帰れと話した。


紅軍に加わったものたちは、東固の山岳基地に送られて、教育と訓練をうけることになった。

また、ほかのものは、約束どおり釈放されて、朱将軍の言葉を借りれば、「農民や国民党の兵士たちのあいだで、酵母のような働きをする」ことになったのである。


敵の連隊長レイ・シー・ニン大佐は、寧都が占領されたとき、平服に着かえてかくれていた。

だが、結局発見され、かくれた場所から引きずりだされ、彼がかつて、町の城壁にその首をぶらさげてみせると約束した相手、朱徳の前につれてこられた。


かねて、この男の好色ぶりをきいていたし、本妻以外に30人の女をかこうには、肉体的にかなりの耐久力を必要とするだろうから、朱徳は、巨大な筋骨たくましいロザリオのような男がくるものとばかり想像していた。

ところが、レイ大佐が、苦笑している二人の衛兵のあいだに守られて、朱徳の司令部に入ってきたとき、朱徳は口もきけないほどおどろいた。彼の前に立たされている男は、取るに足りない小人みたいなやつで、こんな小さい男はこれまで見たこともなかったからである。

そのうえ、捕虜のなかでも一番臆病ものであった。


「ヘぇー、おまえが30人の妾をもっているという男か。おまえが、寧都の城壁にわたしの首をかけると誓った男なのか!」と朱徳はおどろいて叫んだ。

朱徳の幕僚や衛兵たちのあいだから、どっと笑い声がおこったので、この男はすっかり気が動転して、落ち着きを失ってしまった。



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by far-east2040 | 2018-11-30 09:00 | 第7巻「上杭の歌」改編