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農民たちの呼び方でいうと「百頭」地主どもは、大きな町や都市に住み、堅固な城壁に囲まれてきわめて安泰に君臨していた。

その城壁の内側では、これらの地主は、役人であり、裁判官であり、陪審員であると同時に、死刑執行人であり、かつ民団や地方省軍守備隊の司令官でもあった。

地主どもは、これらの軍隊をひきいて村々を歩きまわり、自分たちが税金として賦課した穀物を、農民たちが埋めてかくしてしまわないように、取り入れを監督するのであった。


この暗澹たる農民の人生への絶望感、あるいはむしろ、人生という苦悩に対するあきらめといった方がよいかも知れないものも、「朱毛」というひとりの百姓が、「貧乏人の軍隊」をひきいて、郷紳と戦っているという噂が、「東や西から」伝わってくるにおよんで、春風のもとの氷のようにとけ始めたのである。


うわさによると、この朱毛という男は神通力をもっていて、自分の軍隊を敵から守るために旋風をまきおこしたり、雲をよんだりすることができるといわれていた。


紅軍が来ることを農民たちに知らせるために、やせて、あさぐろく陽にやけ、百姓の服を着た男たちが軍隊に先行して進んでいたが、彼らは呪文ではなく、非常に具体的な話をした。

そうした話を聞いた農民たちは頭を高くあげた。

そして、紅軍が近づくのもまたず、原始的な武器をとって、都市からかけつけた民団に押しつぶされてしまうまで戦いつづけた。

そして、農民指導者の首が、この罪をおかした村々の前で棒の上にぶら下げられ、夜になると、女たちが悲しみに打ちひしがれて、棒の根元にしゃがみこむのであった。

唐朝の大詩人、杜甫――朱将軍は、杜甫こそ、中国最大の古典的詩人だといっている――のことばをかりれば、「闇も、涙にむせんだ」のである。



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by far-east2040 | 2018-11-27 09:00 | 第7巻「上杭の歌」改編