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汀州は、もと匪賊の頭目、クオ・ファン・ミンに統治されていた。

彼は、匪賊として成功し、大地主になり、国民党の将軍になった男である。

クオの部隊は、国民党軍に編入されてはいるが、その大半が職業的匪賊であり、アヘン吸引者であった。

彼らを、汀州の城壁から外へおびきだすことができるならば、かならずうち取ることができるであろう。

だが、それは、彼らの敵が少数で、貧弱な武器しか持っていないことを、彼らが確信したときでないと、不可能なことはいうまでもない。


クオ・ファン・ミンの部隊がくるとすれば、道は一本しかない。

それは、汀州から北にむかう細道で、深い急流をいだいた、せまい渓谷に沿っている。

紅軍は、この谷を見おろす、山なみの上に露営していたのだ。

紅軍は、数人の農民の案内人を、汀州の町に送り、「紅匪」が、町から石をなげればとどくくらい近いところに露営しており、武器はほんのわずかしかなく、弾薬はからになっていて、銃をまくらにねむって、夜が明けるのを待っている、という情報を広げさせた。


翌日の昼少し前に、2個連隊の敵軍が、谷底を通る細い道を一列縦隊になって、進軍してきた。

敵の司令官は、4人の人夫にかつがせた椅子かごに載っている、と伝令が報告してきたとき、朱将軍は、会心の笑みをもらして、「それは、おそらく、クオ将軍が、手柄をたてようと思って、みずから、出かけてきたのにちがいない」といった。

朱徳と毛沢東が、待ち構えていた地点に敵軍がさしかかったとき、紅軍の前哨は、あてずっぽうに数発のたまをうっておいて、あたかも、恐慌状態におちいったかのように大さわぎしながら、山の斜面を逃げのぼった。


「わが軍の前哨は、発砲しておいて、山のなかへ、敵軍をさそいこもうとしているのだな」と朱将軍は推測した。

敵軍は、ただちに追跡をはじめ、あえぎ、汗をかきながら、高く高くとよじのぼってきた。

そして、まったく抵抗にも直面しないので、しだいに大胆になってきた。

紅軍は、ついに、隠れていた場所からいっきょにどっとおそいかかり、敵軍を恐慌状態におとしいれ、山の斜面をめちゃくちゃに追いおとしながら、追跡した。

谷底の小道で、若干、戦闘をまじえたが、敵軍の残りは、すでに川にぶつかって、身動きができなくなり、全員武装解除された。



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by far-east2040 | 2018-11-18 09:00 | 第7巻「上杭の歌」改編