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 朱徳は、彼の軍隊に加わるために、ぞくぞくと集ってくる新しい志願兵の処理と、革命を広げるために農村へ送り出されていく農民分遣隊の組織編成の問題で、朝から晩まで多忙をきわめていた。毎日ひらかれる民衆大会で、話をする時間をやっと見つけだしていた。


 そこで、彼はひとりの婦人のことをきき、まもなくお互い知るようになったが、彼女は大胆不敵な農民組織者として、農民たちのあいだに広く知られていた。彼女は25歳で、力強く理智にあふれた演説家であった。自然のままの足をしており、頑丈な身体で、髪を短く切っており、浅黒い肌は貧しい人のしるしであった。美人とはいえないが、大きくて立派な目は、理智的で決断力を秘めて輝いていた。


 朱徳は、彼女が呉玉蘭という名で、小説家であり、かつて大革命において指導的役割を演じた知識階級の一家のひとりだと、紹介された。彼女の2人の兄弟はただちに革命軍に入り、彼女も政治部に入った。


 「呉玉蘭と私は、耒陽で結婚しました」と朱将軍がいったので、私は、はっと顔をあげてちらりと彼を眺めたところ、朱将軍は、なんだかすこしまごついたような顔をして、急いでこう説明した。


 「われわれの結婚は世間一般の慣習的なものではなかった。私はそれまでに、四川省に妻がいたが、1922年からずっと会ってはいなかった。ときどき文通はあったが、彼女もずっと前から、私の一生が革命のものであり、私が決して家庭に帰らないだろうということを、よく知っていた。呉玉蘭も彼女の家族も、このことは十分承知していたのだが、みな因襲的形式には縛られなかった。もちろん呉玉蘭も、ほかの婦人たちと同じように、彼女自身の名前をもちつづけ、政治部で彼女自身の仕事を担当し、彼女の時間の大部分は村々での仕事についやしていた」


 筆者は、朱将軍の話をさえぎって質問した――


 「あなたは呉玉蘭の話をするときにかぎって、どうしてそうゆううつそうにするんですか? 
彼女を愛してはいなかったんですか?」


 何かこの世のものではない光景を見ているかのように、われわれをとりまいている薄暗い室内をけわしい顔でじっと見つめながら、しゃがれた声でこう答えた。


 「彼女は、その後、国民党軍にとらえられた。やつらは、彼女を拷問した上で、首を切った。

その上、彼女の首を棒につきさして、生まれ故郷の湖南省長沙の町の大通りで、さらしものにした」



by far-east2040 | 2018-09-18 09:00 | 第6巻「土地革命の開始」改編