楊森将軍の裏切り 『偉大なる道』第5巻①ー16

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朱は、軍閥どものやり方はよく知っていたので、以前から親しくしていたひとりの参謀に目をつけて、何度か会って、長く話しこんだ。

するとわかったことは、朱が武漢に出かけた留守のあいだに、楊は呉佩孚からきた代表と秘密交渉をしていたということだった。

数日後、その参謀が、闇夜に朱の部屋に入ってきて、灯火をつけないで話をきいてください、といった。

そしていうのには、楊森は、ふたたび呉佩孚の方に賭けて、呉とともに武漢に進撃する、という腹になった。
その手はじめに、朱と政治工作員を血祭りにあげることにした。


夜が明けないうちに、朱は政治工作員全員を召集し、彼らをひきつれて、万県を脱出し、山の堡塁線をこえて武漢へいそいだ。

10日後に、国民政府首都に到着した朱徳は、楊森に向かって打電した。


「貴下があえてわれらと戦うならば、貴下を徹底的に粉砕すると警告する」


だが楊森の本心は、だれともーーとりわけて、すでに華南の城壁にその名を刻んだ軍とは、戦いたくなかった。
「鉄軍」は、ただちに軍閥呉を攻撃して、湖北から追い、それから湖南の混戦では自軍も大きな損害をうけたが、呉の息の根を完全にとどめた。
その闘争の間に、楊森は「旧友」を救うためには一兵も動かさず、ただ尻尾を巻いて、四川の古巣に逃げもどった。


そののち何ヵ月も続いた、悲劇的な混乱の中で「鉄軍」は武漢に帰還し、蒋介石は上海で革命を裏切り、漢口の国民政府は崩壊し、多くの指導的国民党員がひそかに江を下って蒋の陣営にはせ参じた。

楊森も蒋と同盟をむすんだが、武漢政権がくずれていくのを見ると、湖北の村や都市をおそって荒らした。

やせたけがらわしい豹のように、彼は村里から村里へと彷徨して、農民組合に属していたあらゆる農民、労働組合に参加していたあらゆる労働者、髪を切っていたあらゆる娘を殺した。

不従順な村の前には、農民の首をさらした棒が立ち、男や女は大きな共同の墓穴に生き埋めにされ、家々は完全にこわされ、夜になると、あえて脱出を夢見てうろつく貧者の足音が、不気味にひびいた。

楊の方はこの殺戮では少しも傷つかなかった。

というのは、人民は武装しておらず、「鉄軍」はそのときには、はるか遠い江西省で革命の戦いにしたがっていたからだった。



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by far-east2040 | 2018-08-07 09:00 | 第5巻「大革命について」改編