東方民族会議での演説 「ひとつの秘密の兵器」①ー5

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国際問題に対する朱将軍の態度は、真珠湾攻撃の2週間前に延安で行われた東方民族会議の席上で、彼が読んだ長文の演説原稿にはっきりといいあらわされている。

中国、日本、朝鮮、インド、および蒙古の数百人の代表が出席したこの会議は小さくて目立たなかったが、歴史の流れに影響を与えるものだった。


朱将軍は演説の最初に、世界人口の半分を占める十億の東方民族は百年以上にわたって帝国主義的征服者に対する革命的闘争を行ってきたとのべた。

それから太平天国の乱以後の中国の革命闘争を分析し、ついでインド、ビルマ、オランダ領東インド、インドシナ、フィリピン、朝鮮の独立運動について簡潔な歴史的説明を行った。

日本にもふれて、明治維新以後の民主主義のための闘争で数千人の日本人が命を犠牲にしていることを指摘した。


それから、第二次世界大戦をもたらした情勢について次のように要約した。


「中国を征服できないため、日本帝国主義は、こんどは南方の他のアジア諸国に向うにちがいない」


その攻撃がいつ起こってもおかしくない証拠として、戦場で奪った日本軍の文書を引用した上、さらにつけ加えた。


「日本は国防を再編成し、緊急戦時法規を定め、優秀な空軍力をつくり、国内の統制を強化し、その経済全体を戦争体制に切りかえた。

最近日本では、しきりに大規模な防空演習を行っている。

最近東条将軍が政権をついだのは、日本の全面的な軍事化のあらわれである。

以上のような措置は、中国との戦争には不必要だが、英米およびソヴェト同盟との戦争には不可欠のものなのである」


彼はまた在外日本人の引き揚げ、つまりオランダ領東インドからの2700名、米国からの引揚船3隻、その他香港などからについてもふれた。


彼の集めたそうした情報から判断すると、日本の戦略ではアジアを4つの地域に分けていると説明した。

① 日本、朝鮮、台湾を含む地域

② 中国の占領地域とインドシナ。

③ フィリピン、タイ、ボルネオ、マレー、ビルマ、オランダ領東インド。つまり石油、ゴム、錫、鉄、米、キニーネ、その他日本の戦争産業にとって不可欠な原料を豊富に持つ地域。

③ 綿花、羊毛、鉄その他の資源をもつインドとオーストラリア。

  中央アジアのチベット、青海、新疆なども含まれる。


日本の戦略には現地住民の反逆者、スパイ、仏教徒などの利用も含まれていると彼は続ける。

さらに放送局、映画、新聞雑誌などの買取りと利用、それぞれの国の編集者、放送関係者、著述家や講演者などの買収もあった。

日本の主なそして一番効果的な宣伝は「アジア人のためのアジア」「日華共存共栄」「英米帝国主義の軛から中国を解放せよ」といったスローガンであった。


だが、日本は数百万の中国人を殺し、家を焼き、中国の天然資源を略奪しているから、そんな宣伝にのるのは反逆者だけだといい、彼は付け加えた。


「われわれは、日本の反英反米宣伝や、日本が後押ししているアジア諸国の独立運動に、迷わされてはならない。

日本帝国主義は、白人帝国主義と変りはないのだ。……われわれは、イギリス、アメリカが東方の諸民族に対してもっと開けた政策をとるように希望する。
そうすれば、日本は、東洋と西洋との諸国民のあいだを分
裂させることはできないのだ」


その2週間後、日本が真珠湾を攻撃して太平洋戦争に入った。

1時間もたたないうちに、朱将軍は岡村の「三光」掃討作戦で生々しい手傷をおっていた菅下の全部隊に矢継ぎ早に命令を出した。


ただちに反撃を開始して、日本軍部隊が南太平洋に転用されるのを妨害すると同時に、日本軍に占領された失地を回復せよというのであった。

同じ命令の中で、日本占領地域から避難してくるあらゆる連合国人に保護を与えることも軍民に指示した。


紫字はアグネス・スメドレー著 阿部知二訳『偉大なる道』より抜粋


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by far-east2040 | 2017-06-02 12:59 | 朱徳の半生(改編後削除予定)