四川軍将校への呼びかけ 長征③ー6

f0364260_23124120.jpg

事実上朱将軍が張国燾の捕虜のような状態で西康省で過ごした一年間のことについては、私(スメドレー)は彼から直接話が聞けなかった。
ちょうどこの時期の聞き取りになった時、抗日戦が始まって、彼は前線に出動したからである。

そこで私は、ほかの人の話や、彼がこの時期に書いた軍事や政治に関する書き物に頼るしかなかった。

それから推察すると、朱将軍は、西康にいるあいだに精力的に書き物をしたばかりでなく、四川軍閥軍との戦では全力をあげて張国燾を助けたようだ。


彼がこの時期に書いた報告書の一つは軍閥軍隊の分析であった。
西康省西部の甘孜にいたときに書いたものらしい日付のない報告書では、万年雪のある山岳での戦術を扱っていた。
私はそのページのあいだに二枚のけばけばしい桃色の紙を見つけた。
その紙には当時の憂愁の心に訴えるものがあったと思われる二つの古詩の断片が走り書きしてあった。


朱徳はラジオで世界情勢に通じていた。

それは彼がアビシニア(エチオピアの旧名)軍の戦術や帝国主義諸国のイタリア・ファシズム支持について詳細な分析を行っていることからもわかる。


1935年12月25日付の一つの文章は四川軍将校たちにあてた長文の公開状だった。

簡潔でしかも力強い文章で、19世紀半ばからその当時までの中国の独立のための闘争の歴史的分析で始まっていた。


この公開状には、東京と南京とのあいだの悪名高い塘沽協定ばかりでなく、1935年7月調印された何応欽・梅津秘密協定まであげてあった。
この秘密条項は、南京政府が中国の抗日運動の全面的弾圧に同意したものだった。


この文書は、朱徳の深い歴史的知識と見透しをしめすと同時に、どんなに不遇の境地にあっても戦いを求めてやまない彼の情熱を示している。
次に原文のまま抜粋しておく。


「すでに二ヶ月間、エチオピア人たちは国の独立のために戦っている。エチオピアはわずか一千万の人口と三十万平方マイルの領土しかない小国であるが、人民は人口も軍事力も数倍する帝国主義列強と戦っている。


われわれ中国人は、数千平方マイルの領土と四億の人口、そして黄帝と呼ばれる先祖に始まる四千年の歴史を持っている。ところが国民党政府は、敵国日本に抵抗するために銃一つ取ろうとしないばかりか、次から次へとわが領土を日本に渡している。


エチオピア戦争と日本の中国侵略は同じ侵略、分割、および植民地主義をめざす帝国主義戦争である。どちらも第二次世界大戦に拡大してゆく前哨戦であり、その場合にはいかなる国も中立にとどまることはできない。迫りつつある世界大戦においては、中国は広大な戦場と化すだろう。つまり中国は肉になり、帝国主義者は屠殺人になる。


われわれはみなこの国に生まれた。われわれはここに住み、ここがわれわれの唯一の故郷である。われわれは、祖国の破滅を救おうと考えないほど奴隷根性になり下がることができるだろうか? 四川軍諸君! 諸君は何万という兵隊と優秀な近代兵器を持っている。どうして諸君は、独立のために輝かしく戦っている小さなエチオピアの例に習おうと考えないのか。わが国の勇気ある人士は、どうして祖国存亡の戦に踏み出そうとしないのか……


ひたすら帝国主義のための露払いを目ざす反逆者蒋介石は、あらゆる抗日組織を破壊したり禁止したりして、日本帝国主義に対する忠誠を示している。自ら祖国を失うことを望む中国人がはたしているだろか」


この訴えは、四川軍に紅軍とともに民族統一戦線を組織して次の三つの条件を遂行することを続いて提案している。

内戦を停止すること、四川軍の支配する全地域の中国人民に民主的権利を与えること、抗日義勇軍を組織し武装する権利を人民に保証することである。

最後は次の言葉で結んでいた。


「諸君がこれらの条件を受け入れるならば、われわれと協議する代表を任命してくれたまえ。
もし、まだ反逆者たちの命令に従い、人民を弾圧し共産党をせん滅せよという蒋介石の命令を実行するため、攻撃を続けるならば、諸君は帝国主義の前衛であり、帝国主義の道路掃除人である……いまや抗日の使命は中国大衆の双肩にかかっている。
もし諸君が日本と戦おうと望むなら、諸君は大衆を恐れるべきではなく、大衆と責任を分け合うべきである。
もし中国が隷属の底に沈むならば、諸君も免れることはできない。
巣が落ちれば卵はわれる。諸君の目標は名誉と富だろうが、もし中国が亡びるなら、たとえ金持になり十万畝の土地を持ったとしてもどうなるだろうか……もし諸君がわれわれの提案をしりぞけ、日本帝国主義の召使として売国行為を続けるならば、結局もたらされるのは、祖国と諸君の家族の破滅であり、諸君の名誉と肉体の破滅である。
その場合諸君は人民の裁きを免れることはできない。諸君はいずれの道を選ぶかーーいまこそ決意すべき時である」



[PR]
by far-east2040 | 2017-05-15 23:24 | 朱徳の半生(改編後削除予定)